#LCSForever 論争再び - 漏洩したRiotとLCSチームのやりとり

LCSForeverというハッシュタグでLCS参加チームの保護を求める議論が活発になっていましたが,まだ水面下で協議が行われていたようです.

RiotとLCSチームの溝が深刻であるという問題が浮き彫りになったのが今年の8月で,Montecristo氏の動画に始まり,Reginald氏の告白などからLCSチームが存続の危機にあるということが分かりました.そしてWCSを迎え,WCSのPrize Poolが拡大されたりもしていて,一見この問題は沈静化したかのように見えました.恐らくチームとRiotの間でもWCS期間中は紳士協定で事を荒らげないというものがあったのかもしれません.しかし少し前になりますが,とある手紙がリークすることになりました.
Slingshot obtained Saturday a letter owners of the North American and European League of Legends Championship Series teams sent to Riot Games outlining their concerns and some suggestions for the future of the LCS.

from SLINGSHOT

ということで,一体何なのか訳しつつ確認してみます.

Letter from LCS team owners


To: Marc Merrill, Whalen Roselle, Jarred Kennedy and Jason Yeh
cc: Brandon Beck

Marc, Whalen, Jarred and Jason:

ここ数年NAとEUのチーム(“チーム”)はそれぞれのRiotとLCS参加に関わる諸問題について話し合ってきた.それによって以前Riotに提出したように,どちらのリージョンのチームも重大な問題を抱えている事が分かった.

解決しなければならない課題


チームとRiot間における議論の最終目標というのは次のような問題を解決するためのものだったはず:
1.    不十分な手当や降格のシステムによって生まれる,プレイヤーの職の安定性や,公平な手当,長いキャリア形成の困難さ.
2.    不十分な手当や降格のシステムによって,チームがLCSプロプレイヤーに十分な投資ができないことによる損失.
3.    降格のシステムによって,LCSシーンとそのファンの関係が希薄になること
4.    降格や,スポンサーに対する制約による,チームのスポンサーへの悪影響
5.    不十分な手当や降格のシステムによって,LCSからCSチームに再編しなければならないため,プロへの道が断たれているということ.
6.    チームへの手当がないことから,チームそのものも経済的な危機に直面していること.


Riotのこれまでの提案


しかし残念なことに,Riotの提案というのはこれらの問題に対して殆ど解決策になっていない.そしてRiotの立場,考え方というのは次のようなものだと理解した:
1.    降格システムの廃止

a.    NAでは2018年の創立メンバー(フランチャイズ制における参加チーム)が決まるまでは降格システムへの手入れは行わない.そして現状のNAチームが長期間のパートナーとして相応しいのかはまだ判断しかねている状態.
b.    EUではこの創立メンバー制度については検討しておらず,2019年までは議論しない.そしてRiotは地域拡張ための選択肢を探っている状態.降格システムは続く.
c.    RiotはNAのチームに対して,創立チーム選定のための基準や尺度を提供することはしない.同様にEUに対しても自動更新のシステムの提案や降格システムの廃止を行うこともない.
d.    RiotはNAのチームに対して,創立(チーム選定のため)の基準を告知する日を教えることもない.

2.    資金強化

a.    Riotは長い目で見れば資金を稼げるという考えで,資金使ってくれるようなパートナーを求めているが,長期的な融資はどのチームにも行わない.チームが赤字運営するのは自分たちの責任であるとしている.

b.    Riotはデジタルアイテムのインセンティブについて次のような条件を受け入れる:

i.    2017年のデジタルアイテムの収益は各チームに対して,運営とプレイヤーで50/50に分割する前提で最低でも(Minimum Guarantee - MG)$100K/€100K分配する.このMGにチームが既に稼いだサモナーアイコンの収益も含めること以外の,支払い方法や補填方法といったことについては決めていない.

ii.    2016/2017:25%分のチャンピオンシップチームスキンの売上は,そのチームが属するリージョンのチームとプレイヤーで分配する(比は未決定).

iii.    2017:サモナーアイコンの売上は前年の売上まで100%分配し,その後は50%を分配する.

iv.    2016/2017:Worldsのサモナーアイコンは総売上の10%を均等に,全てのWCS参加チームに分配する.

c.    グッズの売上分配 – 未決定

d.    スポンサー収益の分配 – 2018年まで保留

e.    放送収益の分配 – 2018年まで保留

f.    補助金総額の最低値 – 保留

g.    昇格の保証 – 保留


チームの反応


降格システムや,売上の分配,2017年度分の最低補助金額を決定しない限りは,デジタルアイテムの売上に関する要求を受け入れてもらっただけでは明らかにこの文章の冒頭で述べた問題解決には至らない.Riotのやり方ではこれまでチームが詳細に説明してきた不安定さや,経済的損失についての問題を修正することができない.
このままでは我々チームの立場との溝は深まるばかりなので,2017年に向けて次のような妥協案を検討している:
1.    降格/創立メンバー制度

a.    創立メンバー制度についてが不透明なままであること,他にも利益の分配をできそうな様子なので,2017年は降格の猶予期間が設けられてもいいのではないか.これによって2017年は”ブリッヂ年”の過渡期間として一般に認知されることになる.
NAリーグの創立メンバーに対するビジネスモデルは,その選定基準も含めて2016年12月1日までに開示すること.

b.    EUリージョンにおいては,自動的な参加権の更新を行って欲しい.最早降格の仕組みは必要ない.

2.    チームへの手当

a.    チームは今後も資金の損失に苦しまなければならないという,今回の提案は受け入れられない.これからもチームが十分な利益分配や創立メンバー参加への約束もなしにLCSシーンを盛り上げなければならないとするのなら,RiotはLCS参加チームに十分な埋め合わせをそれぞれ行うべきで,LCSのチームに活動資金として$700K/€700Kを,プロモーション活動やチームのIP使用の補填とするべきである.
(逆に)NAのチームは各選手に対して最低$100Kの給料を保証する.
Riotは2017年にEUのチームの選手に対する最低補助手当(Minimum Player Compensation - MPC)を廃止すると述べた.それに対し,選手の最低賃金は適用されない.EUチームへの補填を増やせば,選手の給料やドイツの社会保障費,その他ドイツの就労や税法による高額な維持費を相殺することができる.

3.    グッズの販売

a.    2016年12月31日まで – 2016年中にRiotとチームの協議によって納得のいく解決策を模索する.

4.    デジタルアイテムの売上

a.    上述したRiotの提案を受け入れるが,チームのIPやeSportsの競技シーンに関するアイテムの場合は50%の利益分配とする.

5.    スポンサー収入の分配

a.    2017年まで保留

6.    メディア収入の分配

a.    2017年まで保留

これらの妥協案というのは,NAチームは2017年での創立メンバー制度,EUは参加権の自動更新,降格システムの廃止,そしてスポンサー,メディア収益の分配などの点においてチームが最大限Riotに譲歩した結果で,チームへの支出というのは劇的に少なくなっている.
今回の妥協案だけでは冒頭の問題を効果的に解決することはなく,どんなにやっても2017年の各チームは赤字運営になる.しかし,今回の妥協案というのはRiotにとって2017年を見据える上では受け入れられるものであると信じている.
今回の妥協案に対してRiotが遅くとも2016年12月1日までに回答することを望む.その後に考えている事があるので…
CLOUD9 ESPORTS, INC. (for C9)
CLG ESPORTS LLC (for CLG)
DIGNITAS ESPORTS LLC (for DIGNITAS)
ENVY GAMING LLC (for Envyus)
PHOENIX1 ESPORTS, LLC (for P1)
IMMORTALS, LLC (for Immortals)
TEAM LIQUID ENTERPRISES LLC (for Team Liquid)
SOLOMID CORPORATION (for TSM)
FNATIC LTD (for Fnatic)
GIANTS GAMING E-SPORTS S.L (for Giants)
GAMERS 2 MEDIA S.L (for G2)
H2K GAMING LTD (for H2K)
ESPORTS NOW LLC (for Team Misfits)
ORIGEN GAMING S.L (for Origen)
SPLYCE INC (for Splyce)
UNICORNS OF LOVE UG (for Unicorns)
REDWING (for Vitality)
ROCCAT GMBH (for Roccat)

どういう意味なのか


今回の一件を含め,LCSチームの運営といえばMontecristo氏です.例に漏れずこの手紙に対して動画を投稿しています.

動画の内容まで詳しく紹介はしませんが,もっとも重要な点について述べています.
Riot is not sure that the current NA Teams are desirable long-term partners, this is the core of everything.

フランチャイズ制において,現在のチームを参加させることが賢明かどうか判断しかねている状態であるということです.そしてこれまでに述べられている創立メンバーという単語は敢えて使っているとしていて,それはRiotが少なくともリーグ(≠LoL)をコントロールするためだとのこと(フランチャイズ制であればリーグコミッションがトップになることになります).どのような呼び方であれ,NFLやNBAのような仕組みになることになります.

そうするとRiotとしてはIPに対するお金が欲しくなります.よって彼らとしてはMSIやLogitechのようなPC業界のスポンサーではなく,コカコーラやNBAのチーム,投資家などから桁違いの出資を受けたい訳です.そのためこのまま現状のTSMやC9のような(業界のスポンサーから援助を受ける)チームだけに永続的な参加権を与えることには旨味がなく,そこが渋っている理由なのではないかと述べています.

一方で創立メンバーという名のフランチャイズ制に参加する側としては,その枠確保のためにどうすればよいのかというのが気になります.だからこそ,今回のようにNAのチームオーナー達は慌てていることになり,このまま利益のないリーグに出資し続けても良いのかどうか判断できない状態になっているのだろうとのこと.世界一の人口を誇るゲームのeSportsシーン,そのフランチャイズ枠のためにそれこそコカコーラのような超大企業が,現在参加しているようなチームが賄うことの出来ないような額の出資をすることは目に見えています.Riotとしては彼らにこそ出資してもらいたいたいのですが,そうするとLoLというゲームをよく知らないチームが続々と参加することになります.そうなれば試合のクオリティが低下してしまうことになります(NRGのように降格することも).

それでも,降格という仕組みを撤廃し出資機会を増やすことしかNAにおいては解決策がないとしています.それだけLoLのeSportsシーンには注目が集まっていたということなのだと思います.EUは英国プレミアリーグのような例があるので,今回のような対応になっているのではないかとのこと.

Overwatchの例


日本でも同様ですが,世界中の20-35の若者は最早テレビを観ておらず,インターネットで生放送を楽しんでいます.よって放送業界はこの年齢層の視聴者獲得のためにeSportsへの出資機会を伺っているとのこと.御存知の通りOverwatchは地域のフランチャイズリーグ開始しました.Riotはこのプロシーンから色々と学ぶことがあるのではないだろうか,とも提案しています.

彼らBlizzardはそういった出資者とチームが話し合う場を設けているそうで,なぜRiotが先にこういった環境を整備しなかったのか不思議でならないとしています.

最後の選択肢


彼が最後に気づいているのですが,この手紙は何度目かの交渉の一部なのではないかとのことです.それは原文で次のように書かれている部分から分かるとのこと.Team's Response項最後から三段落目最終文になります.
...as well as the sharing of sponsorship and media revenue and dramatic reduction of the minimum guaranteed payment necessary to the Teams.

唐突にMGを下げたという話になっている点が文脈的に不自然で,彼らオーナーは$700K/€700KRiotに要求していますが,この額やRev-shareの割合というのは最初期はもっと高額のものだったのかもしれないそうです.額はどうであれ,チームが必死になっている状況は伝わってきます.そしてRiotからの適切な返答が得られなかった場合の選択はLCSシーンのボイコットしかないのではと推測しています.彼自身もオーナー出会った経験から,このような話題というのは出てきてもおかしくないだろうとしています.

Rito plz - Riotの返答は


Dead lineである12月1日までがどうなるのか気になる事態になってきました.今回の文章で興味深いのはRiotのFounder2人だけでなく,NA, EUのeSprotsリーグのトップにも宛られていることです.それだけ話が深刻になっているのかもしれませんね.LCSシーンがボイコットされるのは悲しいことですが,彼ら選手が路頭に迷う事のほうが余程深刻ですので,事態が悪化しないことを望むばかりです.

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