LoLプロシーンLCSの光と影 - #LCSForever が意味するものとは

#LCSForeverのハッシュタグが少し盛り上がっていたようなのでまとめておきます.LoLというeSports最大規模のゲームを開発したRiot,そしてそのプロシーンLCSに参加するチームの運営事情,そして両者の主張について関係者からの発言を見つつ問題となる部分を確認してみます.

先週の話題ですがeSports関係者の発言から気になったものをピックアップして軽く?まとめておきます.LoLのエコシステムとは一体どうなっているのかという点が少し見えたような気がします.恐らく問題はすべてがRiot主導で動いている点かなと思うのですが,だからこそ着実に成長してきたという経緯もありそうなので,世界一の競技ゲームとなった今後どうシステムを作っていくのか,改善していくのかが注目となりそうです.

LoLプロプレイヤーがVRを体験する

話題となっていたのはこちらの動画.
何の変哲もないVRの宣伝動画に見えます.
TSMLoLプレイヤーが,HTC Vive"RAW DATA"というゲームを遊ぶというもの.

恐らくここで気に留めておく必要があるのはViveの宣伝に起用されたのがLoLのプレイヤーであるということ,そしてViveはなんといってもValveが共同開発しているということ,でしょうか.ValveDoTA2を開発しており,いうなればRiotとはライバル関係にある...という点が鍵となりそうです.

LCSチームと収入

さてなぜこの動画が問題となったのか,その経緯についてはNA LCSチームであったRenegadesのオーナーであるChristopher “MonteCristo” Mykles氏の内部告発的な動画に遡ります.
I think that, I am in a unique position to discuss openly the process through which riot undergoes investigations and I don't think that is right. And I think I have an ethical obligation to this industry to make sure that, in the future independent third-party investigations are used that there is a transparency in the ruling precess. Not only Riot but for any other titles that currently exist or may exist in the future, I think that's really important to take a stand now. And say that, this is not an acceptable way to be doing business in an expanding industry where these assets are very valuable and people are professionally invested in.
内容に関しては非常に長いため要約はしませんが,なぜRenegadesが彼のチームではなくなってしまったのか,そしてなぜ彼はBanされたのか,そしてRiotのよく分からない不透明な調査について,実際のやり取りを公開するという形を通して批判しています.Renegadesは結局EnVyUsに吸収されており,プレイヤーを守れてはいるという判断から全文公開に踏み切ったのだと思います.イントロを抜粋しましたが,このような不透明な形の調査チームの所有権を失ってしまうとすると,スポンサーに対して信頼を失うことに繋がり,現状のスポンサーがこういったスキャンダルを恐れて手を引いてしまう潜在的な可能性を高めることになります.Riotが全てを掌握して話を進めていく形式には疑問が残るとのことで,eSports全体のチーム運営と体型づくりについて問題提起しています.

さてこの動画を受け,更に問題を深い部分へと掘り下げたのが次の動画です.
タイトルにもあるようにeSports全体に関わる問題について,そしてその中でeSportsのチームはどう立ち回っているのかという点について解説しています.

英国のプレミアリーグを例として,"Traditional"なスポーツに関しては全体のリーグをチーム全体で管理している(コミッショナーなど)一方で,eSportsで全体的な支配権を握っているのはDeveloperであり,それがリーグを運営していることが全く異なっています.そしてそこから生まれてくる収入の仕組みの違いこそが,現状のeSportsチームが抱える問題であり,eSportsの業界として対応していねばならない問題であるとしています.
So how do these organizations make money? The Number ONE driving force behind revenue in traditional whether you have relegation or franchise system, is "broadcasting revenue". It's because these teams own the league that they collectively bargain then all the owners come together and they make a deal with, together, with a broadcasting entity or several entities and that is where the majority of the income stream comes from.
So where effectively all of the money like 95% of the money to eSports teams comes from is it comes from sponsorships.
想像に難くないですが,他のスポーツであれば大部分の収入は放送に係る部分から来ており(受信料や広告など),そこに加えてチケットの販売グッズなどが加わっていることになります.そして放送権料に関してはリーグの管理団体内でチーム,放送局が決めています.それに対して現状のeSportsチームの収入は全く異なっており,収入の約95%スポンサーからきているとのこと.残りの5%程度がグッズ等による収入とのことです.
Sponsors exert a huge amount of control over the teams.
そしてこのスポンサーが一番大きな影響力を持つということが引き起こす問題として,チームへの負担を挙げています.スポンサーの要求,例えばプレイヤーの行動に関する部分,インタビューや動画作り,その他時間的に拘束される部分が多く,本業である試合を含めると練習に当てる時間が減ってしまっているだけでなく,本人のプライベートの時間すらも確保ができなくなるとのこと.

何故こんなにも異なっているのかについて,それはゲームには知的財産権を主張できる開発者という存在が居るからだとしています.野球やサッカーといったスポーツそのものに所有権を主張する人は居るはずもなく,リーグの運営団体にもそのような権利があるはずもありません.なのでチームは運営団体から一定の割合で放送権料から収入を得ることも出来ますし,自由にグッズを作ったり,球場を運営したりといったことができ,利益を得る方法はいくつもあります.一方,LoLを始めとしたeSportsはゲームを利用している以上,開発が権利を主張していることから,チームが興行収入に関与する余地は一切ないとのこと.特にLoLに関してはそれが顕著だとしています.
そこで思い出すのがRiotの斎藤氏の発言です.
ただ,グッズなどの販売には,サーバーのローカライズとはまた違う課題があり,販売権利や物流網,クオリティの問題,それからその商品が,Riot Gamesの意図しているゲームの世界観とマッチしているのか,といった確認をしなくてはいけません。
Riot Japan 齋藤亮介 from 4gamer
恐らく,LCSチームと公式のグッズ作りとはまた少し話が違ってきているはずですが,今回の一件を見ていると非常にRiotの介入は強いと考えられます.

昇格と降格

It is the death sentence to get sent to the Challenger Series because there is no compensation.
Do you know what happens if you get relegated to the Challenger scene in NA or EU? or anywhere Korea? ... Get fucked. Get fucked. You lose all of your revenue, there is no parachute, there is no safety net to help you out. And people can say, well you know all they deserve to get relegated. Do they?
LoLのプロシーンにはLCSCSが存在していますが,CS枠へと降格されることはチーム運営を不可能にするとしています.それは上記の放送権料の分配のような,ある程度担保された収入が存在していないからだとしています.スポンサー料でチームを運営する場合,全ての判断はスポンサーにかかっています.そのためCS枠で燻っているチームに出資したいと思うか,デバイスを上手く使って活躍してくれないような選手に出資したいと思うか,という問題になっており,現状のLCSチームはこのLCSの出場枠を守るために必死になっているとのこと.
2014年 イベント前に入院していたC9 Hai
各チームはこの降格への恐怖,特に降格に伴うスポンサー撤退に対して非常に怯えており,実際各リージョンのLCSチームは解散と再編を繰り返す結果になっています.この恐怖はTSM,CLG,C9といった大手チームにも付き纏っているとしています.実力不足のチーム降格されてしまうのは致し方がないことだとしていますが,必ずしも実力だけで昇/降格が決まっているわけではないことが更にこのスパイラルを深刻な方向へ向けていると考えているそうです.全ての組織は今回のMykles氏が体験したRiotによる不透明なチームの解散要求だけでなく,昇格や降格に関わる重要な局面で選手の体調不良,事故,家族の問題などの突然の理由から試合を棄権しなければならい可能性があります(例としてC9 Haiの手首の怪我による2015年春の離脱).

そういった“不運”な事情により降格してしまう可能性も十分起こりうる(実際に起こっている)ことから,最早スポンサーによる出資は確率の差に程度はあれど“ギャンブル”になっているとのこと.そういった問題を解決するために,仮に降格したとしてもチームを存続させ,復帰の可能性を残せるような安定的な収入を確保できる手段を残す必要があります.そこで競技シーンの興行収入の分配が必要であり,その際にRiotが全てを管理していることが問題となります.この点については後で触れていきます.

実際,LoLのチームには一定額が補助金のような形でRiotから支給があるものの,運営には全く足りないそうです.
- 日本のeSportsシーンの花型ともいえる格闘ゲーマーの現状
実際支払われている金額は総額で$225,000-$250,000程度だそうですが,現状でLCSチームの運営には$1,000,000程度かかると述べています.この部分が収入の95%がスポンサー料だとする当初の話と少し食い違っているようにも見えますが,実際に運営に関わっていた本人の話なので,誇張はあるにしてもあながち嘘でもないとは思います.そして何故ここまで高額なのか,について選手への給料があるとしています.
So here comes the 2016, at the end of the 2015 we see teams like IMT, NRG and Echo FOX are entering the scene. And these are teams that are backed by very wealthy investors who are willing to outspend the market, because they are hoping to create a team in a fan-base now. So the when Nike and Coke comes and when the teams are able to get broadcasting rights they're established and they can get a piece of that pie in the future.
2015年の終わりから2016年の春開始までの大きな動きとして,非常に強大なスポンサーによる出資を得たチームがLCSに参加してきました.IMTはAMD(他ベンチャー),NRGはバスケットボールチーム,Echo FOXはNBAのスタープレーヤーから出資を受けています.彼らは今後eSportsシーンが拡大した時を見据え,放送権料を獲得するための地盤作りのための参入であるとしており,現状ではこういったチームでも収入は赤字になっているはずとのこと.その為にLCSのスポットを買いHuniとReginover,Wildturtleといった人気選手を獲得しており,実際IMTのspringにおける戦績はご存じの方も多いと思います.そのため選手の獲得競争に対応するべく,給料はTripled,3倍になったそうです.

そうなってくるとこれまでのチームのオーナーとしてはもう太刀打ちが難しくなってきてしまいます.LCSの参加枠とスポンサー契約というのが密接に関係しているからこそ生じてくる問題であり,チームの運営に一番重要な点となっているわけです.そこでオーナーが考えるリーズナブルな方法というのは,CSチームにLCSで活躍していた選手を天下り的に加入させLCSチームへと"Boost"した後に,その枠を確保ないしは売却するという方法です.この方法の効果はC9のChallengerチームの戦績を見れば明らかで,LCSで活躍していた3選手を擁することで優勝しています.この方法はC9のオーナーJackだけでなく実際に多くのオーナーが考えだしている方法とのことで,苦肉の策とはいえ資金不足に悩む組織の運営にはこうするしかないとのこと.
Twitchでのライブ放送を始めとしてチケット代などLCSシーンで得られているであろう売上は本来Riotだけのものではないはず.もちろん試合の賞金は選手に支払われているため選手にお金が行き渡り,その点に関しては不満はないとしていますが,それはチームの収入ではないとのこと.試合の日程も多く,Riotによる拘束も非常に多いにもかかわらず,チームはそこに一切関与できない上に,利益の分配すらもないという点は問題なのではないかと結論付けています.

一方で彼は,CSシーンから勝ち上がって来たチームが活躍していくというのは視聴者を惹きつける強力な材料であるとしており,eSportsを競技性の高いまま盛り上げるのに適していると述べています.彼自身が韓国リーグのキャスターであった経歴もあることから,そういったことは度々目にしており,昇格や降格というシステムそのものを批判しているわけではないとのことで,あくまで問題は収入のシステムにあるとしています.

安定した収入のために

確固たる収入の確保の手段としてChallengerチームをBoostさせ,LCSチームへと昇格し,枠を売却する方法があり,実際に今シーズンC9によって行われています(売却については未定なものの,可能性は高いとされています).
このある種強攻策ともいえる手段に出たオーナーJackですが,真意は安定した収入の確保が目的であると述べています.前項でも触れたように昨年のC9降格の危機に瀕しており,実際にチームの存続の危機にも直面していたとのこと.Haiの離脱に伴いIncarnati0nに対して高額の出資をして確保したのは正にギャンブルでしかなく,結果的に降格の危機は免れたものの,こういったことが続くのはおかしいと考えているそうです.
It's hard to be happy when I know that tomorrow we've got NRG and Echo FOX basically fighting for their lives. And that doesn't make me feel good that these organizations have both and these players have made large sacrifices to be where they are. It's a huge investment, and one of them is going to lose tomorrow. And so I don't really... it kind of kills the excitement for me, when I see those players walking around back there and those owners walking around back there. Like they realize one of them's going to lose their spot. And so it kind of kills the mood.
I want to move on to a franchise model which I think will provide stability for the players and for the teams, that's I think important.
そしてIMTやEcho FOXとともに今シーズン参加したNRGですが,結果的に2017 NA LCS Spring PromotionEcho FOXに敗れ,そのままチームは解散となっており,また歴史は繰り返したことになります.皮肉にもPromotionするのはC9 Cですから表面的かは兎も角として,そういった興廃が繰り返されるのは心が痛むとのことで,彼はフランチャイズ制を提案しています.Mykles氏は現状の昇格/降格の仕組みは悪く無いとしており,リーグの形式に対する考えに若干のズレはあるようですが,目指している部分はチームに対する安定した収入である部分で一致していると思います.

彼らがどのくらい資金を必要としているのか,という部分について具体的な数値は見えてきませんが,スポンサーに全てを依存している現状では収入が1か0かしかなく,そのためのLCSの参加枠の確保が死活問題となるのは明らかではあります.

そしてこの中で出てきたのがELEAGUEとなります.
米国の放送局であるTurner(親会社はワーナー,CNNなどを擁するグループ)が運営する世界初のeSportsのリーグとして,CS:GOを中心に展開しているようです.米国中心である,TVでeSportsを放送する際の視聴率といった問題点は指摘されているものの,試みとしては悪くないとのこと.CS:GOに関してはValveは一切関与しておらず,放送局がリーグを運営している点はこれまでと異なる点と言えそうです.CS:GOは他にも様々なリーグ,大会が行われていることからチームも運営しやすく,収入も比較的安定しやすいそうです.

恐らくは彼らが望むのはこのような形での利益の分配(rev-share)が行われるということなのだと思いますが,そういった動きがRiotには見られず,このままではスポンサーは手を引きチームは解散となってしまうとのことなのでしょう.

不安定さ

さて,話を進めていきます.今問題となっているのは
  • LCSチームはスポンサーに依存している
  • 様々な要因によってLCSからCSに降格してしまう可能性がある 
  • LCSに出場できないとほぼスポンサーは付かず,必然的に収入がなくなりチームは存続できない
  • スポンサー以外からの収入はほぼなく,Riotからの利益のシェアも行われていない
 という点でした.
In any game that is primarily run and operated by the developer of the game, almost any problem you hear about any eSports or conflict you hear about when it comes to broadcasting or a team owners etc. etc. boils down to the fact that the intellectual property of the game is owned by the developer.
One company that owns all of the intellectual property rights and can literally stop you from streaming on twitch, broadcasting on the TV anything like that.
Riotがリーグに対して権利を主張している(できる)という点が,LoLチーム運営を非常に不安定にしている問題だろうと指摘しています.彼ら(Riot)は気に食わない放送やチームの行動をやめさせることも出来ますし,今回のようにリーグから追放することも出来てしまう訳です.そして全てのLCSシーンのルールはRiotが決めていることも,プレイヤー,チームの安定性を悪化させているとしています.

そしてこの点に関して,降格の可能性とパッチについてTSMのオーナーであるAndy “Reginald” Dinh氏はインタビューで次のように述べています.
scarra: What do you think with the critique that people say that the best team and the best players should just learn adapt. Because I've heard that even last year when the last worlds came around, people like "the new patch, well players and teams should just learn to adapt to the new patch because ugh, that is what they're getting paid for." Like the best players can always adapt to any situation?
Regi: I mean, I think that comments are bullshit, right? Because first off like, from an outside standpoints, really easy to say that. But they don't understand how much effort and time the players have to put into learning the game. It's like essentially if you go to school to become a math teacher, and all of the sudden you find out like six month later that you have to like teach science otherwise you'll lose your job. That's basically what it is, right? Because I don't want to get into too much but the way the system works. If you get relegated, you're done. And because the challengers teams are weak, if you get relegated you lose pretty much lose everything.
Riotはリーグを所有しているだけでなく,ゲームを開発している会社になります.そのためゲームに対して自由にPatchを当てることが出来ますが,それがチームの戦績に直接関わることから,結果的に昇/降格に繋がるとしています.勿論,それぞれコンセプトが有りゲーム性を変更することに関しては構わないとしていますが,タイミングが悪すぎること,そして頻度も高く内容も大幅に変わりすぎることが問題であるとしています.

プレイヤーやチームはコロコロと変わるパッチに対応できることが必要であると考えられがちですが,実際そのようなプレイヤー/チームは少なく,その裏で非常に多くの時間を練習に費やしているとのこと.そしてそれはいつまでも続けられるものでもなく,このままRiotの思うようにパッチが当たり続けるとすると競技シーンの質も低下してしまうと述べています.実際のところ2016年のNA LCSも各チームのパフォーマンスは安定していません(TSM, CLGなど).Spring, MSI, Summerとそれぞれのチームのランクに大きな変化がある事がわかります.またIMTのHuniの例を挙げ,メタが変わってしまうことによる選手への影響を指摘しています.これらはパッチの時期と密接に関わっており,Lane Swapといったテクニック,集団戦マッチアップなどそれぞれのチームが得意とするものに対してどのように変更が行われたかによる部分で差がでてしまうとしています.

このように休む間もなくパッチが当たることはチームの戦績を不安定なものとし,結果的に降格,そして続くスポンサー契約の打ち切り,チームの解散へと繋がる可能性を高めると述べてています.彼自身は明確な解決策は考えていないようですが,何れにしても前述の二人同様,安定的に収入を確保できる,ないしはCSシーンからの復帰できる仕組みづくりや,そもそもCSシーンを盛り上げる必要があるとしており,それに対してRiotの現在のパッチの当て方は受け入れられないと話しています.

社長降臨

このインタビュー公開を受け,LoLのsubredditにおける関連スレッドでRiotの社長となるMarc “Tryndamere” Merrill氏がコメントをしました.
彼はその後の展開を受け発言を編集しており,現在は少し異なるニュアンスのコメントとなっています.当初コメントされたものは以下に残されています.
内容としては過激なものとなっていますので,あまり語弊の無いように書くとすれば
  • TSMのLCS部門は適切な金銭的フィードバックを受けておらず,オーナーは他の部門に投資している,それを止めればもっとLCS部門は安定するはず
  • 選手とオーナーの力関係が良くない場合があること - Reginaldは“良い”オーナーなのでそんなことはないと思うけれど,上手いプレイヤーを囲ってあげる(適切な対価を支払う)ことがないのならそれは問題となる
  • 降格ギリギリなど低い順位のチームに対する支援はしてきているものの,それを不正利用するオーナーがいる
  • パッチのリリースについて,昨年は良くなかったかもしれないけれど,今年は視聴者の事も考えてレーンスワップし辛いようなパッチにしました
  • スタンダードなレーン戦が展開されるようになれば,プレイヤースキル不足を隠す事ができなくなっていいと考えている
  • そしてプレイヤーも練習するし,それに見合った対価を支払われるようになるはず
  • DoubleliftやBiofrostのようなTopプレイヤーであれば,スタンダードなレーン戦ならお手の物だよね
といったところでしょうか.基本的にシニカルな物言いになっています.詳しくは原文にてご確認ください. ここで分かるのは,少なくとも先程までのオーナー3名の主張とは正反対の内容となっているということでしょうか.そもそも金銭的な余裕はなく,スポンサー獲得のため,LCSの枠獲得のために必死になっている現状,そして枠を確保するべく,できるだけ優秀な選手を囲い込もうとしているという点がまるで逆のようにコメントされています.

そしてこの発言に対し,Reginald氏は次のように反論しています.
Most LCS teams lose money because stipends are stagnant, sponsorships for LCS team operations are shrinking and the cost of player salaries, content production, support staff and housing costs are spiraling up.
The reason why I started to invest in other games was because LCS left me no choice. The relegation system is unstable and risky for everyone, other publishers are more collaborative and provide more opportunities for teams and players to make revenue.
The community and the players want the true best teams to represent them in Worlds, but the chances of an upset due to lack of familiarity with the new patch are too high. I have played as a pro for 5 years and Marc and others may not understand how disruptive this is to the careers of players and to the integrity of Worlds gameplay. Huge patch disruptions in playoffs results in unsatisfying results and lower-quality gameplay.
全文はこちら
主張としては前述までと同様で(内容は細かい部分にも触れているのでぜひご確認ください),eSprotsチームにおけるLCS部門は赤字であるということ,降格する可能性がどのチームにも高いまま存在している以上,スポンサーも付きづらく資金を稼ぐ手段が非常に限られていると述べています.加えてRiotの厳しい制限や,コーチ/スタッフの雇用命令など,収入はそこまで増えないままコストはかさんでいっているだけとしています.更に他のゲームとも比較しており,具体的な数値としてはCS:GOにおけるチームアイコンの売上1年分Riotから支給される援助手当3年分とチームアイコンの売上合計よりも多く,開発も収入を増やす方法についてRiotよりも遥かに協力的であるとのこと.

また,パッチについても見当違いの指摘をしており,選手たちは必死になって練習を続けているものの,ゲームは毎年,毎シーズン,毎月のように切り替わっているためキャリア形成に繋がらないと書かれています.それについてはインタビューでの発言と同様で,パッチ一つで全てが否定されてしまうような設計はプロプレイヤーのプレッシャーとなるだけでなく,質にも関係してくるとしています.

最初に問題提起をしたMykles氏もvlogコメントを寄せています.
Nobody is making millions of dollars from the LCS right now, it is very expensive to run an LCS team and there are not enough forms of revenue in League of Legends to really make it worthwhile.
Why aren’t you, Marc Merrill, giving the players more money? You have not given the teams the revenue streams to be able to pay the players more, okay?
内容は社長に対して怒りをぶつけている感情的なものとなっています.前提である選手を第一に,という部分は特に疑問が残るらしく,チームがLCSシーンから利益を得ているものの,適切な還元が行われていないと決めつけている点については,Riotに対してチームの経営を話したこともなく,聞かれたこともないのになぜ分かるのか,何を根拠としているのかすら分からないと激怒しています.

Riotそのものが出資しないことについても,Reginald氏同様疑問を呈する形となっており,毎年約1600億円もの利益を上げている会社がなぜそのプロシーンに投資をしないのかと憤っています.
Riot reportedly made $1.6 billion in revenue in 2015. Why not invest some of that money has made back into the professional scene? League of Legends is the biggest esport on the planet, yet it’s combined prize pool for all six of its world championships is smaller than the prize won by Dota 2’s best team at The International last month. Prizing for the world championship has barely increased since 2012. Neither has the team stipend, which Merrill is so quick to state shows Riot’s commitment to developing the scene. That $12,500 per player per split (as of 2015) combined won’t even cover a single player on Dinh’s roster, much less pay for the team house, coaching staff, food, health insurance, and other expenses he’s covering for the players.
選手のためを思うのならば,Riotが資金を援助すれば良いではないか,とのこと.そうすればスポンサーによる強い拘束を受けることなく選手は自由に活動できますし,チームの運営もある程度安定するはずで,少なくとも現状の悪循環からは抜け出せると述べています.彼はキャスターについても選手と同様に厳しい状況に置かれているとしています.Riot所属のキャスターは非常に安い賃金で働かされており,イベント毎の手当もないとのこと.彼がフリーランスで活動していた際の例として,1回のイベントでのキャスター活動による収入Riotの6ヶ月分の給料に相当していたとのこと.6ヶ月の間相当数のイベントがあり,会社の中での業務も行わねばならないことから,キャスターとして活動できる実力を有する"タレント"を蔑ろにし,相応の対価を支払っていないのはRiotそのものだと批判しています.

更に具体的な数字についてはTeam EnemyのオーナーであったRobert “Chachi” Stemmler氏も同様に投稿しています
Where does that money come from? You know our LCS income? A $130kish stipend. A one time $3125 on icon sales (I'm pretty sure that's a ridiculously low team share -- we receive more than that MONTHLY on skin royalties for our team skin in Hi-Rez's Smite, which does not even remotely compare to LCS in viewership, even if we are in the conversation for best team in the world). A highly impressive $0 in monthly sponsorship revenue for our LCS team.
LCSからのアイコン収入はシーズンで約$3125だったそうですが,それはSMITEにおける同様の収入よりも低いとしています.
このように三者が具体的な数値を出しながら投稿を行い,Riotの社長と全面対決する事態となっていたわけですが,それに対してTryndamere氏は次のように回答しています.
Our 2017 plans include new in-game team-specific items with revenue-sharing for teams and pros, as well as smaller steps like working with teams to sell more jerseys - currently in the NA LCS studio store and at the summer finals in Toronto - and with the cooperation of teams, we hope to bring them to our online store as well. These are just a couple of examples and we’re exploring a lot more major steps, like league sponsorships, franchising, media rights, etc.
パッチに関する考え方は大きく変える姿勢は見せていないようですが,収入の安定性に関してはいくつかの提案を既に用意しているとのこと.しかしながら上記で具体的な数値として出てきた部分 -- 2013年以降大幅に拡大を続けたLoLのプロシーンにも関わらず,賞金は約2億円とほぼ変化しておらず,そしてそれはDoTA2の2016年の賞金である約20億に比べると明らかに少ないこと.同様にRiotからの選手に対する補助として支給される額も変化しておらず,こちらも現状の給料から考えると明らかに少ないこと,などには触れておらず,依然重要な部分がボケている気はします.

とはいえRedditの当初の投稿とは一転し,全体的にオーナーへ理解を示す内容となっていることは好印象なのかなと思います.現在のeSportsを牽引する競技ゲームとしてチームだけでなくプレイヤーの今後も含め話し合っていきたいと締めくくっています.

Riotの縛り

このようにやや譲歩の姿勢を見せかけていた社長,もといRiotですが,それを蒸し返し,あまつさえ火に油を注ぐような発言をしたのがRiot Magus氏です.
社長コメントの冒頭部では
If he's so concerned about the financial health of his players, maybe he should spend some of the millions he has made / makes from League of Legends on paying them instead of investing in other esports where he is losing money?
このように述べています.唐突な批判になんのことかと考えてしまいますが,これこそが冒頭で確認した,TSMのLCSチームメンバーがHTC Viveを使いRaw Dataを遊ぶという動画のことを指していた,ということは続くReginald氏の反論からも分かります.
LCS even threatened to fine us if we didn’t remove sponsor content from our YouTube channel, such as this HTC commercial: URL.
LCSひいてはRiotはこういった動画にも介入しているとのこと.そしてRiot Magus氏の発言を確認してみます.
Real talk, that TSM sponsorship wasn't an actual HTC ad. It was a promotion for a VR video game for TSM to play (the title of the YouTube clip is literally "TSM plays raw data"). Regardless of whether HTC organized this or not, it's a tactic advertisement for another game.
This is against LCS rules because LCS isn't a platform for other game companies to advertise on - yes, this means there's a category that teams don't have access to but for any sport, letting quasi competitors advertise on the league doesn't make sense.
VRゲームの宣伝のようにも捉えられなくもないことから主張に筋は通っているように見えますが,TSMのスポンサーがHTCであることからもゲームの宣伝というよりかはHTC Viveの宣伝であろうことは容易に想像できます.このことから,LCSをベースとして宣伝を行っているという指摘も見当違いでしょうし,スポンサーに関してRiotが介入する余地は少ないように見受けられます.そしてこのコメントを受けHTCのeSports部門はFacebookにて以下のような表明を行っています.
Survios, the creators of Raw Data, did not make any financial investment into the production of the video, nor did they approach us to get it made. TSM selected Raw Data themselves after reviewing a list of Vive games as they felt it would resonate most with their fans.
We simply cannot market the Vive without people playing it and showing the gameplay, and we hope that Magus and others at Riot Esports will understand this.
当然のことですが,HTCはRaw Dataの開発に資金援助をしてもおらず,逆にそのような依頼もなかったとのこと.ゲームに関してはTSMの面々がライブラリから選択したにすぎず,あくまで動画はViveの宣伝としてTSMのファン,LoLのファンに向けたものであると主張しています.そしてVRヘッドセットというものを宣伝するのに,人が実際に使って遊んでいる様子を動画とする以外の方法はないため,ゲームの内容が映ってしまうのは仕方がないことであり,それをRiotには理解して欲しいとしています.
For instance, what is the difference between an LCS player streaming Deus Ex and making a YouTube video of a Vive game?
But with less avenues for advertisement in League of Legends, stemming from the restrictions on the teams and players, restrictions on the subreddit, and the lack of available marketing opportunities at competitions, it is becoming difficult to justify our investments into the scene.
また,具体的な例としてLCS出場選手が自身のストリーミングでDeus Exを遊んでいるのは,Viveを使ってVR体験をしている動画を作るのと何が違うのか,具体的な線引が曖昧であるとも批判しています.このように厳しい制限ばかりではLoLに対する投資機会を失ってしまい,スポンサーは距離を取るようになるとも指摘しており,実際の大手スポンサーであるだけにインパクトのある発言となっているのは間違いなさそうです.

今後

話が出たのは先月ではあるものの,大部分の話は先週の出来事であることから,今のところ目立った動きが見られるわけではありません.今後のeSportsシーンの肝となる重要な話題ですので性急に結論付けるものでもないのかなという気もします.
Marc, I agree that these urgent issues need to be addressed immediately. There is a detailed proposal signed by NA LCS teams and players headed to your inbox today. We'll solve these problems together.
Reginald氏はNA LCSチームのオーナーからの意見をまとめたものを社長に直接提案する形をとることを表明しており,その後は特に動きは見られません.今回の一件を受け#LCSForeverというハッシュタグがオーナー側の動きの支持表明に利用されており,オーナーや選手が呟いている様を確認できます.
オーナーだけでなく選手やファンも今回の動きに反応していることが分かります.

eSports成長の裏側で

In the earlier days of eSports, Riot did a very good thing by creating the LCS. There was no way that anybody was going to give that level of production value to eSports. Riot did it off their own dime because they were making an awesome product and if they had outsourced, we saw that what happened when they outsourced that ESL in the early days in Europe, it wasn't anywhere near is good. There wasn't a production company in the west that was capable of doing that and monetizing it and making enough money to improve the production level to the point where it is at Riot currently. But now things have changed.
Mykles氏は批判も目立つものの,LoLを開発し,LCSを生み出すことでeSportsの認知向上,そして選手を保護し,プロゲーマーに最低限の収入を担保できるような環境を作ったRiotは素晴らしいと述べています.そのような企業は当時なく,eSportsがこれだけ成長したのは間違いなくRiotのおかげであるとしています.しかしながら時代は変わってしまったとのこと.チームも資金がなく,スポンサーもやっと確保していた2013年までとは異なり,現在はTurner(CNN)のELEAGUEを始めとして,Nikeやコカ・コーラなど様々な大手企業が出資の機会を伺っている状況になっています.にも関わらずチームがこれだけ不安定なのはそういった機会をRiotが排除しており,敢えて遠ざけるような仕組みとしているからだと結論付けています.

実際にオーナーの主張はその点で共通しており,随分と事態は深刻化していたのだなぁと考えさせられますね.Mykles氏も指摘していましたが,例としてLCSで利用されたスキンの売上変化 -- 恐らくは向上している についてチームに対して何の還元もなかったということなど,Riotが利益を分配していなかったことには少々驚かされた気もします.こちらに関してはRiotの今後の動きに期待しつつ注目といったところでしょうか.オーナー側の動向というのも気になるところです.
- Lane Swapping from iDigitalTimes
一方でパッチについては共通のゲームを素人からプロまで遊ぶという仕組みである以上,パッチを当てなければ飽きられ遊んでもらえない,一方でプロは環境変化にギリギリ付いて行っている状況というジレンマがあるように感じますので,Riotとしても難しい部分なのかなと思います.LaneSwapやDuo JGといった初心者には分かりづらいテクニックを極力排除し,シンプルな,集団戦を中心とした試合にしたいという意図も分からなくはないものの,逆に捉えるとそれはプロシーンというよりはハイレベルなSoloQに近くなってしまいます.プロシーンならではのチームのカラーとしてLaneSwapなどがあり,それを行えるような環境とするほうが将来的には大事なのかなという気がしますね.

今回の一件はTSM Reginald氏を中心とし,NA LCSC9,IMT,TL,Apex,CLGのオーナーの面々が目立っていますが,EUなどNA以外のリージョンのLCSシーンについても当然適応されるはずの話ですから,そちらにも注目していきたいところです.

それにしてもHTCの主張にもありますが,LCS出場選手の放送でLoL以外のゲームを遊んでいることは日常茶飯事ですから指摘するのならそちらが先だろうという気もします.とはいえそれもあくまで本人とチームの話ですからRiotは関係ないはず...ということで巨大化したRiotに少し傲慢さが出てきてしまったのかなという感じですね.

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orz.game: LoLプロシーンLCSの光と影 - #LCSForever が意味するものとは
LoLプロシーンLCSの光と影 - #LCSForever が意味するものとは
#LCSForeverのハッシュタグが少し盛り上がっていたようなのでまとめておきます.LoLというeSports最大規模のゲームを開発したRiot,そしてそのプロシーンLCSに参加するチームの運営事情,そして両者の主張について関係者からの発言を見つつ問題となる部分を確認してみます.
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