ゲーマーの消費活動とモバイル - RiotとBAMTechが作るアプリとは

ゲーマーの消費についての統計結果が出たようです．モバイルに関する決済が多いという話で，これはRiotがBAMTechと組んだ理由にも関連するのではないかなといったところ．

ゲーム市場の統計調査を行っているnewzooの結果に興味深いものがあったので少しチェックしてみます．今回の調査はE-コマースでの消費活動において，世代間の差はあるのかという点に焦点が当てられています．ゲーム市場における中心層となるのは20-30代のミレニアル世代ですが，実際彼らがどういった消費動向を示すのかという点は気になるところです．

また，eSportsを視聴している世代も平均は28歳という統計結果が出ていますから，やはり同じミレニアル世代．ということでゲーム市場そしてeSportsシーンにおけるこの世代というのは非常に強い影響力を持っていることになりますから，彼らの取り込みというのがマーケティングの上では重要なポイントになります．そして彼らはTVを持たず，従来のスポーツ観戦率も低いことから，この層獲得のためにeSports市場に参入する企業，チームが急増しているのは現状を見れば明らかではあります．

さてこのミレニアル世代ですがnewzooによれば更に第1,第2世代そしてGen Xというグループに分けられるとのこと．

21世紀に入ってから幼少期を過ごした世代をミレニアル世代，Gen Yと呼ぶようですが，その上の世代はGen Xとなります．第1ミレニアル，第2ミレニアルどちらも10代を21世紀に入ってから過ごしており，インターネット，PCといった今のIT文化興隆真っ只中に育ったデジタルネイティブな世代です．

彼らの支払い方法は勿論デジタル．

Apple Pay，Google Pay，Visa Checkout，Paypalがデジタルペイメントに相当しますが，特にモバイルなオプションがあるのならばそちらを選ぶとのこと．

When it comes to paying for goods or services, gamers and Millennials expect the process to be quick and seamless and are embracing mobile digital payments.

この傾向は世界的に共通しているようです．そしてこの傾向は若い世代ほど強くなることが分かりますね．海外のbank transferがそもそもそこまで早くないという背景もありそうですが，クレジットカードも使わないというのは少し意外な気もします．しかし次の統計結果を見てみるとその理由も分かるようになってきます．

興味深いことに49%のミレニアル世代のゲーマーはモバイル経由の購入を好むとのこと．モバイル経由とはモバイルサイト，及びアプリケーションのことです．また36-50歳のGen X層もゲーマーであれば39%と，非ゲーマーの24%に比べると多くの人がモバイルによる購入を選んでいるようです．スマートフォンの普及によりリッチなECサイト，アプリケーションを提供できるようになりましたから，わざわざPCを使わなくとも商品検索，購入の流れが容易になっているということなのだと思います．

これが恐らくモバイルなデジタル決済を好む理由につながっているのかなという感じで，PayPalなどの決済方法はアカウント情報だけで支払いできますし，実際のクレジットカード情報は直接店舗に送信しないのでセキュリティの面からも安心できるという点が関係していそうです．

そしてサイトデザインについても触れられています．

ゲーマーはテキストベースのナビゲーションよりもグラフィカルなナビゲーションを好むとのこと．とはいえこれはゲーマーに限らないかなと思いますが，非ゲーマーに比べて17%程度意識に差があることからこの世代のゲーマーを意識するのであれば見た目のデザインも重要になりそうですね．

モバイルアプリといえばRiotも...

この統計結果を見ていて思い出すのがRiotが提携先として選んだBAMTechの事業内容です．実際には彼らはストリーミングサービスとなりますから，必ずしも今回のe-コマースでの統計とは一致しない部分もありますが，LoL関連のグッズ販売，チームのグッズなど商品販売するケースもあるかと思います．

We're gonna launch this app, again, on a stage bases country region by region, that's our hope. And player we can create an app based on the input from the fans, the customers, the teams and executives to build something that everyone loves and needs to use everyday.

 from Bob Bowman, President of MLB Advanced Media

彼らは有料のサブスクリプション形式とともに，アプリを作りたいと述べており，インフラ整備を中心としていました．彼らの事業内容については軽く前回チェックしていますが，実際どのようなアプリケーションなのかというものを改めて確認してみたいと思います．

MLBにおいてコアとなるのがAt Batというアプリケーション．観戦の他に配球などの情報を出してくれるというもの．プレイの解説も掲載されていますし，内容が非常に詳細なことが分かります．iPadなどのタブレット版ではリアルタイムに更新されるオーバーレイを利用することも出来るようです．

At Bat app

そしてこのUIの雰囲気というのはTwitch（最近はTwitchだけでもないですが）でeSportsを観戦しているものに近いように感じます．

Twitchにおけるチャットというのは結構大きな役割を担っており，課金して購読すればそのチャンネル専用のemoticonを利用できる仕組みですので，ユーザーの購読意欲を煽るためにもチャットは欠かせないものではないかと思います．勿論試聴の途中で挿入される広告も重要な収入源ではありますが，観戦を盛り上げるという意味でもchat spamは必要...

ということでBAMTechがRiotのために観戦アプリを作るとすればチャットが組み込まれる可能性は高いと考えられます．そしてオーバーレイ．使い勝手のよく，詳細なオーバーレイというのは他のeSportsに比べてもLoLは特に親和性が高いでしょう．誰がどこにWardを置いたのか，誰がどこでどんなダメージを受けたのか，誰がどこでRoamを開始したのか，いつTPを発動したのかなどなど...観戦者が知りたい情報というのは数知れず存在します．

生身の人間が物理的なフィールドの上で競技を行う野球と異なり，デジタルなゲームクライアントを介して対戦するLoLですから，RiotがBAMTechのために大会用に向けてアプリケーションを改変しデータを収集出来るようにする可能性もあるわけです．そうすればリアルタイムに選手のプレイを分析することもできますし，観戦者のためのリアルタイムで詳細なオーバーレイを設計することも容易になります．

そして今回の統計結果です．ゲーマーはモバイル経由での購入，支払いを好むというもの．この結果を観戦アプリに組み込むとすれば，対戦チームのグッズが同時に表示され直接購入できたり，ピックされたチャンピオンのスキンが表示され，そのままゲームアカウントと紐づけすることでゲーム内の購入も行えるようような仕組みというものを作ることが出来ます．ユーザーはわざわざ自分たちでLoLクライアントやウェブブラウザでチームのストアページにアクセスすることなく，購入を行えるようになり，そういったシームレスな流れをゲーマーは好んでいます．

最近NALCS1とNALCS2があるけれど

今年に入って試合数が増えたことから，参加チームの多いリージョンでは同時進行で試合が行われています．お気に入りのチームの観戦だけでいいや，という例ならばともかくお気に入りの選手はまた別のチームにも居るとすれば同時に観戦できるとうれしいもの．北米中各地で試合が行われるMLBだけに，At Batのウェブアプリケーションは同時観戦も行えるようです．

MOSAIC VIEW aveilable on MLB.TV Premium

ゲームの開発，ユーザーのアカウント情報などLoLに関する全てを所有するRiotがBAMTechと連携し，eSportsの中心となるミレニアル世代に向けたアプリケーションを開発するとすればこういったものになるのではないでしょうか．多くは妄想になりますが，At Batのアプリケーションというものはかなり完成度が高く，これがLoLの観戦にも組み込まれるとすれば有料でも値段次第では使いたくなってしまいます．

アプリケーションの開発というのはマーケティング的にも賢明な判断だったというのが統計結果からも分かるというのはなかなか面白い部分になるのではないかと思います．来年以降動き出すと述べている両者ですが，一体いかなるアプリケーションがリリースされてくるのか非常に楽しみですね．